F-082:ダメ。ゼッタイ。 <前編>

 

 先日、麻薬及び向精神薬取締法違反でピエール瀧さんが逮捕されました。

 

 加熱する報道の影響なのか、厚生労働省が主催する薬物乱用防止(および向精神薬等の適正使用)を推進するキャンペーン運動の標語「ダメ。ゼッタイ。」を思いだしました。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4654010.html

 

 Wikipediaによると、「ダメ。ゼッタイ。」運動は3つの観点で批判されているそうです。1)スローガンへの批判(薬物乱用者の社会的孤立を深める等)、2)薬物依存症患者を治療させる発想がないという批判、3)公布される情報のデータを保持していないとする批判 です。

 

 私は、コーチとして、様々な“失敗”に立ち会ってきました。もちろん私自身も痛い“失敗”を経験しています。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/15110477.html

 

“現状の外”にゴールを設定し挑戦者として生きているのですから、ときに“失敗”があるのは当然です。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html

 

なかなかうまくいかない時、挫折した時、壁を乗り越えられる気がしない時 

そんなときに「ダメ。ゼッタイ。」という言葉は、確かに重いのかもしれません。

 

 (「ゴールに向かう者と薬物使用者を一緒にするな」という御批判があるかと思いますが、「認知的不協和を感じている者」という抽象度<LUB>での意見と御理解ください)

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882652.html

 

 そんなことを思いつつ、コーチとして「ダメ。ゼッタイ。」について考えてみました。気になったポイントのうちいくつかをまとめます。

 

 

 〇「ダメ。ゼッタイ。」を強調するほど、無意識の抵抗が強くなる

 

人間には「押されたら、押し返す」という情報処理の特性があります。強く否定されるほど、反発(誘惑、言い訳)は強まります。誰もがきっと「『ゼッタイ』と強調されるほどひっくり返したくなる衝動」を感じたことがあるはずです。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882703.html

 

 

 〇「ダメ。ゼッタイ。」は一方的な価値観の押し付け

 

 もちろん薬物使用を肯定している訳ではありません。(否定するつもりもありませんが)私自身はタバコを吸わず、酒も飲みません。医師としてもなるべく内服薬を減らそうと試みる立場です。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5445932.html

 

「タバコや酒は合法だからOK。コカインや大麻は非合法だからNG」という主張(クレーム)は理解しますが、その境界を決めるのはあくまで人であり、けっこう恣意的です。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194585.html

 

 例えば、2013年にウルグアイにおいて世界で初めて大麻が合法化されました。2018年にはカナダが大麻の合法化を発表しています。アメリカ合衆国では全50州中9州と首都ワシントンDCで娯楽目的の大麻使用が合法化されており、医療目的であれば29州(+ワシントンDC)で合法です(20182月時点)。アメリカ国民の62%が大麻合法化を支持しているとされています。

 

 ルールには必ず事実(データ)や根拠(ワラント)があるはずですが、その判断は状況により変わりうるものです。だからディベートの技術を磨き、論理的思考を続けることが重要だといえます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/12340209.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_254557.html

 

さらに言うと、情報空間すべてに不完全性が働くのですから、「ゼッタイ」は自動的に価値観の押し付けになります。ゼッタイに(笑)。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194669.html

 

 

 〇「ゼッタイ」と言っていいのは自分自身に対して

 

 では、「ゼッタイ」という言葉を使ってはいけないのでしょうか?

 

私は自分に対して「ゼッタイ」を使うのはOKだと思っています。なぜなら、ゴールがあるから。

 

 100% want toのゴールに向かう自分に対して「ゼッタイ」とセルフトークをすることは、エフィカシーを高め、生産性をアップするためのアファメーションになります(「ダメ」という否定形はNGですが)。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html

 

F-083につづく)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

 医療目的で大麻が合法化されている国があることに触れました。日本では合法的な医療用麻薬(オピオイド)の消費量が極端に少ないことが明らかになっており、国際的にも問題視されています。

 少し古いデータですが、日本医師会が監修した「がん性疼痛治療のエッセンス(2008年版)」から引用します。

 がん性疼痛治療のエッセンス(2008年版) PDF

 http://dl.med.or.jp/dl-med/etc/cancer/essence2008.pdf

 

 

医療用麻薬消費量の国際比較(2004年~2006年)

 医療用麻薬消費量の国際比較(20042006年)

 

 


 日本の医療用麻薬消費量が少ないのは、「医療文化の違い」や「麻薬に対する(ネガティブな)先入観」が原因と言われています。それは「文化」や「先入観」、あるいは「常識」といったものが「生権力(バイオパワー)」として機能していると解釈することができます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_292569.html

 

 その一方で、麻薬の規制が緩い国々では「オピオイドクライシス」と呼ばれる過剰摂取や中毒死の問題が生じています。

 では、どうすればよいのでしょうか?

 その具体的解決法について、F-084からのシリーズで、コーチの立場で提言いたします。