F-079:ヘンリー・フォードの教え -中編-

 

 

あなたができると思おうが思うまいが、どちらにしてもあなたは正しい

Whether you believe you can do a thing or not, you are right.

 

 

 これは米フォード・モーターの創設者 ヘンリー・フォード(18631947年)の言葉です。T型フォード発売後わずか10年でアメリカで保有される自動車の半分を占めるという大成功をおさめた業界の革命者のこの言葉は、認知科学の研究により紛れもない事実であることが明らかになりました。

 

 しかし、フォード・モーターの成功は長続きしませんでした。「マネジメントは必要ないとの信念がその理由である」というのが経営学者 ピーター・F・ドラッカー(19092005年)の分析です。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/16240713.html

 

ドラッカーはマネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関」と定義しましたが、「経営管理」という意味で使われる現代のマネジメントは「組織の目標を設定し、その達成に向け経営資源を効率的に活用し、同時にリスク管理を行うこと」を意味しています。

 

では、ドラッカーの分析を踏まえたうえで冒頭のヘンリー・フォードの言葉を考察するとどのようなことがわかるでしょうか?

 

 

 「マネジメントを機能と責任に根ざすもの」とするドラッカーの考えには、建設的動機とそのための自由を尊重する姿勢が感じられます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/10400987.html

 

 建設的動機(want to)と強制的動機(have to)の間に大きな差が生じることは、米ハーバード大学ビジネススクールの研究により明らかにされています。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html

 

 「いかに有能な部下であっても、マネジメントとして行動し、意思決定を行い、命令なしに行動した者を馘(くび)にするか左遷する」というトップの行動は、チーム(組織)を「ファイト・オア・フライト」に陥らせ、have toを生みだします。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html

 

 そのような状態では誰も創造性を発揮することができず、やがては思考停止となり、現状維持を是とするようになります。奴隷マインドの完成です。当然、パフォーマンスはますます低下していきます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14120540.html

 

 

あなたができると思おうが思うまいが、どちらにしてもあなたは正しい

 

 

 部下(仲間)に対するヘンリー・フォードの低い評価、すなわち「あなたたちにはできない」「安心して任せられない」というネガティブな思いが、have toを生み、部下の潜在能力を封印し、フォード・モーターの凋落という“正しい”未来を創造してしまったのです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/12794797.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542317.html

 

ドラッカーの分析を踏まえたうえで冒頭のヘンリー・フォードの言葉を考察するとわかることとは、「『できる』と信じきること」「『できる』を拡大していくこと」の重要性です。

 

その「『できる』という確信」をエフィカシーと呼びますが、このエフィカシーを高め、さらに拡大していくことがマネジメントの本質であるとドラッカーは言いたかったのではないでしょうか。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html

 

そのエフィカシーは、個人や組織といった次元を超え、社会にとっても重要なものとなります。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8430748.html

 

F-080に続く)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記1-

 ヘンリー・フォードと発明王 トーマス・エジソン(18471931年)には接点があります。1891年にエジソン照明会社の技術者となったフォードは内燃機関の実験に取り組み、1896年にFord Quadricycleと名付けた自作4輪自動車の制作に成功します。

同年、パーティー会場で尊敬するトーマス・エジソンに初めて会ったフォードは、自動車に関する夢を熱く語り、エジソンに励ましてもらったといいます。

 

 今回の記事ではヘンリー・フォードのマネジメントに関する失敗に焦点をあてていますが、その前の成功には間違いなく“現状の外”へのゴール設定がありました。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html

 

 そして、発明王が若きフォードを励ましていたこと、つまりエフィカシーを高めていた事実も見逃せません。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html

 

 

-追記2

 私は11年間病院長として勤めた病院へのコーチング導入に“失敗”しました。いくつか解決するべき課題を見いだしましたが、私自身の職員(とくに経営陣)への「『できる』という確信」が足りなかったのかもしれません。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/15110477.html

 

 コーチはいつもまわりのエフィカシーを高める存在であることを忘れずに、「『できる』と信じきること」「『できる』を拡大していくこと」を実行したいと思います。

 



フォード初の自作4輪自動車(from Wiki)

フォード初の自作4輪自動車
Wikipediaより引用