F-078:ヘンリー・フォードの教え -前編-

 

 

あなたができると思おうが思うまいが、どちらにしてもあなたは正しい

Whether you believe you can do a thing or not, you are right.

 

 

 これは米フォード・モーターの創設者 ヘンリー・フォード(18631947年)の言葉です。

 フォードは自動車自体を発明したわけではありませんが、ライン生産方式による大量生産技術を導入したことで、自動車を国民にとって身近な存在に変えました。

 1908年に発売されたT型フォードの売値は825ドル。手作り自動車の相場が30004000ドルだった時代にT型は爆発的に売れ、わずか6年で販売台数が25万台に到達しました。1916年には360ドルという安価モデルが発売され、たった10年の間にアメリカで保有される自動車の半分がT型フォードになったといわれています。

 

 そんな業界の革命者 ヘンリー・フォードの先の言葉は、フォードの時代には経験則に過ぎなかったのかもしれませんが、認知科学の研究により紛れもない事実であることが明らかになりました。

 

 

あなたができると思おうが思うまいが、どちらにしてもあなたは正しい

 

 

この言葉は「思いが現実をつくる」ということを言い表しています。コーチングの元祖ルー・タイス氏のプリンシプルでいうと「I×V=R」です。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6542364.html

 

 そして、それは「この世は心(マインド)がつくっている」という釈迦の縁起の思想と同じともいえます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 

 目の前の世界はすべて心(マインド)が生みだしています。

 それは記憶でつくられ、ホメオスタシスで維持される、重要な情報の集まりであり、幻想です。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/11823351.html

 

 一つの情報空間(情報場)にホメオスタシスがフィードバック関係を持つようになると、当然その臨場感は高くなっており、その空間(場)がリアルになります。その人にとって。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4831660.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4971818.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4971956.html

 

この認知科学的事実を方程式にしたものが「I×V=R」。そして、この「I×V=R」が人々の間で約束事をうみ、幻想を共有させます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/11823843.html

 

 

あなたができると思おうが思うまいが、どちらにしてもあなたは正しい

 

 

しかしながら、この言葉は成功の永続を保証するものではありません。

 

I:イメージ」を更新しなければ、さらなる進化・向上は望めないからです。時代の変化に合わせて「I」を変えることができなければ、やがては必ず衰退していきます。

(その時代の変化さえ「I」として生みだすものであるということについては後編で)

 

事実、一時代を築いたフォード・モーターは衰退しました。

そのことについて経営学者 ピーター・F・ドラッカー(19092005年)がするどい指摘を行っています。代表的著作「マネジメント-課題・責任・実践」(ダイアモンド社)より引用します。

 

 

 ヘンリー・フォードの成功と失敗、そしてその孫ヘンリー・フォード二世によるフォード社の再生については多くがいわれている。しかしそれが、二人の人間の成功と失敗の物語をはるかに超える意味を持つものであったことは認識されていない。それは、まさにマネジメント無視の実験だった。

 ヘンリー・フォードは、事業にマネジメントは必要ないとの信念ゆえに失敗した。事業に必要なものは、オーナー起業家とその助手だけであるとした。他の起業家との違いは、彼が自らの信念に固執した点だけだった。いかに有能な部下であっても、マネジメントとして行動し、意思決定を行い、命令なしに行動した者を馘(くび)にするか左遷するという彼の行動は、自らの信念の間違いを証明する実験となった。

 フォードの物語が重要な意味をもつのは、寿命と資金に恵まれたために、そのような実験を実際に行うことができたところにあった。失敗したのは、性格や気質のためではなかった。マネジメントを機能と責任に根ざすものとして受け入れることを拒否したためだった。

 

 

 マネジメントの由来は「手」を意味するラテン語「manus」で、「モノを扱う」という意味がはじまりだそうです。それが「行き届いた管理」を意味するようになり、「すべての資源(とくに資金)を効率的かつ効果的に使う」というように拡大しました。

 

ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具・機能・機関」と定義しましたが、「経営管理」という意味で使われる現代のマネジメントは「組織の目標を設定し、その達成に向け経営資源を効率的に活用し、同時にリスク管理を行うこと」を意味します。

 

 では、ドラッカーの分析を踏まえたうえで冒頭のヘンリー・フォードの言葉を考察するとどのようなことがわかるでしょうか?

 

F-079に続く)

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

ヘンリー・フォード

ヘンリー・フォード(1919年の肖像画)
Wikipediaより引用