Q-072:不言実行はなぜ大切なのか? 有言実行は本当に間違っているのか?

 

 2019年の正月、子どもが書初めで「不言実行」と書くのを見ていました。

 「不言実行が大切なのはなんでだと思う?」と質問していると、別の子が話に加わり「有言実行という言葉は格言としては誤りなんだよ」と教えてくれました。

 

 皆さんに質問です。

 

 格言はなぜ不言実行なのでしょうか? なぜ不言が大切なのでしょうか?

 有言実行は本当に間違っているのでしょうか?

 

 今回はそんな疑問について、コーチの視点で考えていきたいと思います。

 

 

 「不言実行」の不言、つまり「言語化しない」ということには大切な理由がいくつかあります。

 

 一つ目は「言語化した途端にwant toからhave toに変わってしまう」ということ。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5882609.html

 

 二つ目は「言語化すると、それを見たり聞いたりした人がドリームキラーになる可能性がある」ということ。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6040935.html

 

 三つ目は「言語化によりエフィカシーを下げてしまう可能性がある」ということ。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5616012.html

 

 四つ目は「言語化すると抽象度の上限をつくってしまう」ということ。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4448691.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4449018.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4516484.html

 

 もちろん、ゴールのイメージがあることは大前提ですが、それを具体的に言語であらわしてしまうことはイメージを固定化しゲシュタルトを強固にしてしまう危険があります。人間は一つのゲシュタルトで物事を認識していますので、スコトーマが外れにくくなることになります。

 (そもそも具体的に言語化できるものは現状の中にあり、ゴールとはいえません)

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5615935.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6193912.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html

 

 五つ目は(四つ目と被るかもしれませんが)「言語により構築された世界を超えて非言語情報処理を行うことが困難になる」ということ。

 

 脳の機能でいえば「前頭前野外側部を抑えて、前頭前野内側部を活性化させる」ことが重要です。それは天才が行っている情報処理であり、苫米地理論でいうところの「左脳言語野を抑え、右脳言語野を活性化させる状態」のことです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/14120540.html

 

 以上の理由より、格言が「不言実行」であることにはとても意味があるといえます。

 

では、「有言実行」という言葉は間違っているといえるのでしょうか?

 

 

 コーチングでは「有言」も重要視し、積極的に活用します。

 

 その一つがアファメーションです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/12645685.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_292583.html

 

 もう一つの例として、ゴールを目指す過程のコミュニケーションツールとして「有言」を利用することがあげられます。ある程度抽象度の高いゴールを目指す場合には、コミュニケーションは必ず必要になります。私たちは縁起として存在しているからです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 

 より具体的に(有言でw)説明します。

ゴールがあると、やるべきことが詳細にわかってきます。それをエンドステートと呼びます。

そのエンドステートを実行するために様々な状況や可能性を想定し(アサンプション)、状況の変化に合わせて更新していくこと(アサンプションアップデート)が必要になります。

その過程で具体的な行動(コース・オブ・アクション、COA)が決まってきます。コース・オブ・アクション(COA)とは「想定される状況を吟味した上での、そのいくつかの状況下で行うべき行動パターン」のことです。

当然、組織の場合、エンドステートやCOAは言語で共有されていなければなりません。よって、「有言」が重要なのです。

 

 

目指すべきゴールはあくまで“現状の外”であり、抽象度の高いものです。

「曖昧で抽象的でよくわからないけれど、なにか漠然とすごく高いところにありそうだというぐらいの認識」、すなわち「不言(より正確には非言)」でかまいません。

 

つまり、ゴールとしては「不言(非言)」が正しく、そのゴールを達成する過程で「有言」を活用するということ。

 

もしもゴールそのものが「有言」に変わってきたならば、すぐにゴールを再設定しなおし「不言(非言)」にすることが大切です。

 

「不言実行」「有言実行」をそのように使い分けてみることをお勧めします。

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

-追記-

 エンドステート、アサンプション、コース・オブ・アクションなどについては苫米地博士の著書 「コーポレートコーチング(下)」(開拓社)を御参照ください。

 

 

コーポレートコーチング