Q-071:認知的不協和の状態にあり頭痛が続いています。適切なアファメーション、ビジュアライゼーションはどうすればよいでしょうか? Vol.8;「リラックスできる呼吸の無意識化」のコツとその先にあるもの
認知科学者 苫米地英人博士の読者の方から御質問をいただきました。セルフヒーリング&セルフコーチングのコツをイメージしながら、しっかりとまとめてみました。
シリーズ(計八本)でお届けします。
Vol.1 はじめに(目次):
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13825164.html
Vol.8;「リラックスできる呼吸の無意識化」のコツとその先にあるもの
今回でこの連載は最終回です。いただいた御質問の最後の部分に回答いたします。
Q:…また対処としましてリラックスできる呼吸の無意識化につきまして、何かご教示頂ければありがたく存じます。よろしくお願いします。
A:私は、「リラックスできる呼吸の無意識化のコツ」とは …「呼吸を意識に上げること」だと考えています(笑)。
…何かを覚える時、最初はぎこちなかったのが、だんだんスムーズに行えるようになっていった経験はありませんか?
それは意識して行っていたことが、無意識に行えるようになった(考えずにできるようになった、体が覚えた)ということ。
無意識化は「並列処理のコツ」といえます。
その時にマインドでおこっているのは「ゲシュタルトの構築」です。
ゲシュタルト(Gestalt)とは、形態を意味するドイツ語で、「全体性を持ったまとまりのある構造」のことを指します。全体と部分の双方向性で成り立ち、一つの統合的意味を持つまとまりです。部分を積み重ねたから全体がわかるのではなく、全体がわかったから部分の意味が決まることともいえます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6193912.html
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例えとして、自動車学校に通ったときのことを思い出してください。
まず車の運転に必要な知識を学びます。車の構造から具体的な操作方法、ルールなどです。
ひととおり学んだ後実技に入ります。最初に車を運転した時はかなりぎこちなかったですよね。「まず安全確認をして、クラッチを踏んで、ギアをローに入れ、それからアクセルを踏み込みつつクラッチを戻し…」など、次に行うことをひとつひとつ考えながら運転していたはずです。
アクセルの加減が強いとクラッチが滑り、弱いとエンストすることを経験し、アクセルを踏み込んだ時の加速の感触、ブレーキを踏みこんだ時の制動の感覚などを体験し記憶しながら「車の運転」を覚えていきます。
では、車の運転がぎこちなかった頃とスムーズになった今では何が違うのでしょうか?
…答えはマインド(脳と心)の使い方です。
ぎこちなかった頃は、ひとつひとつの動作を意識して行っていました。思考のパターンは論理的(または言語的)で、その処理はシリアル(直線的)に行われています。
ところが上達するにつれて、運転を無意識下で行うようになります。いちいち次の動作を考えなくても「手足が勝手に動く」状態です。思考のパターンはイメージ的(非論理的、非言語的)で、その処理はパラレル(並列的)に行われています。
その感覚を、ブルース・リーは「考えるな、感じろ(Don’t think. Feel)」と表現しました。
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人によってタイミングはいろいろでしょうが、スムーズに運転できるようになり「慣れた」と感じるようになった頃には、必ず意識下の処理から無意識下の処理に変わっています。
その時にゲシュタルトが新たに構築されています。
アップル社の共同創設者 スティーブ・ジョブス(1955~2011年)が、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った講演で語った「connect the dots」という言葉は、ひと回り大きなゲシュタルトで物事をとらえることの重要性を語った言葉です。点と点をつないだ“より大きな視点”をもつことができると、一見バラバラに見える事柄を見て、その中に共通の法則を見いだすことができるようになります。
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「ひと回り大きなゲシュタルトで物事をとらえる」「より大きなゲシュタルトを再構築する」というのは、「抽象度を上げる」ことに相当します。
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つまり、「ゲシュタルト能力」と「抽象度を上げることができる能力」は同義です。そして、その能力こそが、私たちが「知らないことは認識できないのに、新しい知識を得ることができる秘密」です。それは真の教育のプロセスで「人間形成」とともに獲得していくものです。
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前置きが長くなりましたが、苫米地博士の読者である御質問者が、「ゲシュタルトの構築」を意味する「無意識化」を重要視する気持ちはよく理解しています。
そのうえで、あえて「リラックスできる呼吸の無意識化のコツは呼吸を意識に上げること」とするのが私の答えです。
…車の運転と違って、呼吸はもともと無意識下で行っています。この世に生まれでた赤ちゃんが、「さぁ~、肺呼吸するぜ~」と思いながら泣くはずがありません。呼吸は最初からホメオスタシス活動なのです。
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ただし、ここでいうホメオスタシスとは物理次元でのもの。
呼吸というバイタルな(命に関わる)ホメオスタシス活動を意識に上げることは、物理空間から離れ情報空間に移行することを意味しています。逆腹式呼吸はさらに「身体操作もかえることで情報の取り入れ方を変える」方法です。
それは「Rのゆらぎ」を生みだし、抽象度を上げるための意識状態(変性意識)を自らつくりだす重要な技です。
呼吸を意識に上げることで深めた変性意識を使って、自身をさらなるリラックスに導いていく
…「呼吸を意識に上げること」が「リラックスできる呼吸の無意識化のコツ」であるという感覚を御理解いただけたでしょうか。
私はずっと、このことは守秘義務内容の秘伝中の秘伝だと思っていました。一昨年(2017年)、なんと苫米地博士御自身が著書の中で開示されました。「完全版変性意識入門 自分のリミッターをはずす!」(ビジネス社)です。その本には私のインタビュー記事も掲載されています(「医師の目からみた気功」)。ぜひ御確認ください。
余談ですが、呼吸法については「洗脳護身術」(開拓社より再販)に詳しくまとめられています。
では、最後に「バランスホイールを常に意識し、そして偏りなくゴールを達成していくことはとても重要なこと」という点について説明します。Q-069の最後では、それが「ヒーリングのコツになる」といった小さな話でおさまるものではないことをお伝えしました。
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「バランスホイールの重要性」とは、「ゴールの数だけゲシュタルト(世界)が生まれ、それが現実化していく過程で、ゲシュタルト同士がつながりますます豊かになっていくこと」です。
複数のゲシュタルト(世界)を同時に認識しバランスをとる意識状態は、深い変性意識状態になることで可能となります。その変性意識生成のポイントが呼吸です。
ふだんは意識していない呼吸を意識に上げるうちに深い変性意識状態になり、ゴールの数だけ生まれる広大な世界(ゲシュタルト)を同時に観て、バランスをとれるようになるのです。
複数の世界(ゲシュタルト)を同時に観ている間に、より大きなゲシュタルトが構築されていきます。それは「抽象度が上がる」ことでもあります。
そうやって抽象度を上げ続けると、宇宙のトップである空(くう)に到達するはず。
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すなわち、“バランスホイールの先にあるもの”とは、空への到達であり、覚りです。
…以上が私の回答です。
西洋医学と東洋医学の違いを明らかにし、ヒーリングとコーチングの関係を考察しました。セルフヒーリング&セルフコーチングのコツ、そして“バランスホイールの先にある空”を感じていただけたらうれしく思います。
御質問、ありがとうございました。
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
苫米地博士が公に開示された情報の範囲内での回答です。
苫米地理論は「超情報場仮説(理論)」の次のパラダイムに入っています。新たな理論は、ワークスDVD第17弾「分散動的自己構成エネルジーア 自律知能化と生命素粒子そして進化」やフォレスト出版の教材「ダヴィンチ脳2 ~超次元生命情報場~」などで学ぶことができます。
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