PMⅠ:The Power of Mind Ⅰ
PMⅠ-06:職場への苫米地式コーチング導入挑戦と明らかになった課題
PMⅠ-06-11:仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
この章(第六章)では、「院長を務めていた病院へのコーチング導入“失敗”」という事例について、仮説を立て、トゥイーキングを行っていきます。その目的(ゴール)は、「失敗から学び、“いのちの現場”にコーチングをしっかり届けること」です。
告知:http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13216030.html
“失敗”を解決する方法:http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13397552.html
仮説06)二つの「怒り」とその間にある論理的思考
Panasonicの創始者である松下幸之助さんは、著作「指導者の条件」(PHP研究所)の中で、「指導者は、指導者としての公の怒りを持たないといけない」と書かれています。
父親譲りの「瞬間湯沸かし器」を自認していた私は、初めてこの言葉にふれたときに衝撃を受けました。「どのようにして怒りを鎮めるか」「怒りといかに無縁になるか」ということばかりを考え、怒りという情動(感情)を完全にネガティブなものと捉えていたからです。
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「公の怒りを持たなければならない」という言葉に触れ、スコトーマがガツンと外れた気がしました。
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苫米地理論を学ぶようになり、怒りという情動についても、「善悪」など価値判断をするための絶対的な基準はないことを理解しました。
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「善悪」はその人のおかれた状況により変わります。そして、その状況はゴール設定により自らつくりだすものです。
(組織の場合、状況はリーダーがゴール設定によりつくりあげます)
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ただし、怒り自体にアプリオリな意味はありませんが、明らかに性質の違う二種類の怒りが存在しています。「動物的怒り」と「人間的怒り」です。松下幸之助さんの表現に当てはめると、「動物的怒り」は「私憤」、「人間的怒り」は「公憤」といえます。
「動物的怒り」「私憤」とは扁桃体レベルでの価値判断であり、低い抽象度の階層での怒りです。「ファイト・オア・フライト」時にみられる感情的な怒りともいえます。
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それに対して、「人間的怒り」「公憤」とは前頭前野レベルでの価値判断であり、高い抽象度の階層での怒りです。
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私たちの脳には階層性があります。その階層性は脳の進化と関係しています。
脊椎動物の脳は、脳幹、小脳、大脳で構成されています。この基本構造はどの脊椎動物でも共通ですが、各パーツの大きさやその機能は進化の度合いで大きく異なっています。
魚類や両生類の大脳は大脳辺縁系だけで大脳皮質はありません。爬虫類には大脳皮質がありますがごく小さいもので、大脳辺縁系がほぼむきだしです。
大脳辺縁系は旧皮質といわれる「本能を司る脳」で、食欲や性欲などの本能や、怒りや恐れといった原始的な感情に関係しています。
鳥類や哺乳類の大脳皮質は大きく発達しており、運動野や感覚野といった高度な機能を持つ部位がここに宿っています。鳥が巧みに空を飛んだり、哺乳類が素早く行動できるのはこの大脳皮質の働きのおかげです。
哺乳類でも霊長類になると、大脳皮質に連合野が現れます。その中でも、思考や創造、推論、意欲、情操といった人間ならではの行動の源、さらには自我や意識などの根源と考えられているのが前頭前野です(前頭連合野とも呼ばれます)。
ちなみに、大脳皮質に占める前頭前野の割合は、ネコが3.5%、サルで11.5%、人間では30%といわれています。霊長類の中で最も進化した人間が、高度な認知や行動を行えるのはこの前頭前野のおかげです。
さらに前頭前野は、論理的な判断をつかさどる外側部と社会的情動にかかわる内側部に分かれます。ディベート中に活性化するのは、論理脳である前頭前野外側部です。
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このように階層性は脳の進化と関係しており、進化した脳ほど抽象度は高く、階層的に高い世界に臨場感を感じることができます。
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余談ですが、教育の目的は、人類の進化といえるこの脳の変化を、個人の成長に落とし込むことです。それは「人間形成」という形で実現していきます。
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階層的に上位にある脳は低位にある脳よりも優位にあるため、その情報処理に容易に介入することができます。ところが、第四章でも御紹介したとおり、危機に瀕すると「ファイト・オア・フライト」という心理状態に陥り、上位であるはずの前頭前野の活動が抑えられ、扁桃体を含む大脳辺縁系の活動が活発になります。
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これはより確実に生き残るための本能的な働きではありますが、人間らしさを失い、ただの動物に成り下がってしまう原因にもなります。
今回のテーマでいうと、前頭前野での怒りが「人間的怒り」「公憤」に相当します。「ファイト・オア・フライト」の状態での大脳辺縁系での怒りが「動物的怒り」「私憤」です。
まとめると、進化の過程で「私憤」→「論理」→「公憤」となりますが、不安・恐怖がコントロールできないと突然「私憤」優位に陥ります。その様をSW風に表現すると(笑)、「ダークサイドに堕ちる」です。
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この章(第六章)で取り上げている事例でいうと、「私憤」が 1)組織を囚人化し、2)代案を失い、3)想像力を封印する結果を招いたといえます。
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繰り返しになりますが、「公憤」が大切なのは「高いIQを維持したまま、問題の本質を見極め(ケース)、解決策を見つけるため(プラン)」です。
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さらに、「現状を打破するための大きなエネルギーを生みだすため」という理由もあります。
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超情報場仮説(理論)では、抽象度が上がるほどポテンシャルエネルギーが大きくなると考えます。
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http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306438.html
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306445.html
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つまり、大きなエネルギーを得るために高い抽象度を意味する「公」が重要で、そのエネルギーをしっかりと物理空間で発揮するために「憤」が必要なのです。
松下幸之助さんが「指導者の条件」で伝えたかった「公憤」とは、“現状”を打破する鍵となるものです。創造的破壊のポイントともいえます。
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リーダーは、「私憤」に陥らないように気をつけながら、「公憤」を保ち続ける(燃やし続ける)必要があります。それを可能とするのは抽象度の高いゴールとその達成の確信です。
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<仮説06:人類の脳は「私憤」→「論理」→「公憤」と進化してきたが、不安・恐怖などをきっかけに容易に「私憤」に陥ってしまう。「私憤」を克服し、「公憤」を維持するために抽象度の高いゴール(の共有)が必要>
<トゥイーキング06:ゴールを更新し続けることで、公憤(公の怒り)を燃やし続ける>
□ 人間の脳は「私憤」→「論理」→「公憤」と進化してきた
□ 「私憤」とは「動物的怒り」で扁桃体・大脳辺縁系の活動。「公憤」とは「人間的怒り」で前頭前野内側部の活動
□ その間に前頭前野外側部の活動である論理がある
□ 不安・恐怖をコントロールし前頭前野優位をしっかりと保つことで、高い抽象度のエネルギーを利用することが可能となる
□ そのために「ゴール設定」が必要
(つづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
二回目のPX2を開催してはならない理由を経営陣に質問しましたが、なかなか明確な返答は得られませんでした。コメントの多くは情動(感情)レベルで、「私憤」に思えました。そんな経営陣に対し、私は「公憤」を貫いたと思っています。
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