Q-063:「ゲシュタルトができあがると理解が深まる」とはどういうことなのでしょうか?

 

 シリーズ編「S-01-07:“議論”の先にあるもの」に関連して、御質問をいただきました。ありがとうございます。

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Q:ブログ内の「ゲシュタルト」の説明中には「ゲシュタルトとは、形態を意味するドイツ語で、『全体性を持ったまとまりのある構造』を指す」とあり、スティーブ・ジョブスを話題にしたものには「全体と部分の双方向の関係がゲシュタルトである」とあります。

 そのゲシュタルトができると「理解が深まる」というのがよくわかりません。ぜひ教えてください。

 

A:ゲシュタルト(Gestalt)とは、形態を意味するドイツ語で、「全体性を持ったまとまりのある構造」のことを指します。全体と部分の双方向性で成り立ち、一つの統合的意味を持つまとまりです。部分を積み重ねたから全体がわかるのではなく、全体がわかったから部分の意味が決まることともいえます。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6193912.html

 

ゲシュタルトは同時に一つしか維持することができません。

なにか一つのゲシュタルトで認識すると、他のゲシュタルトが消えます。それは「スコトーマに隠れる」と表現することもできます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5721610.html

 

例えば、「ルビンの壺」でいうと、「壺」という認識、そして「向き合った人の顔」という認識がそれぞれゲシュタルトです。ぜひ検索して画像を確認していただきたいのですが、不思議なことに「壺」として見ると「顔」が消え、「顔」と見た途端に「壺」が消えます。

 

ところが、「壺にも顔にも見えるトリックアート」というゲシュタルトで認識することができれば、意識的に壺にも顔にも見ることができるようになります。一つ上の抽象度で「壺も顔も包摂するより大きなゲシュタルト」をつくったのです。

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http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4449018.html

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それが「理解が深まる」ということです。

 

スティーブ・ジョブスが語った「connect the dots(点をつなぐ)」は、ひと回り大きなゲシュタルトで物事をとらえることの重要性を語った言葉です。点と点をつないだ“より大きな視点”を持つことができると、一見バラバラに見える事柄を見て、その中に共通の法則を見いだすことができるようになります。

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その法則を見つけた瞬間が「ひらめき(inspiration)」であり、理解がさらに深まった瞬間です。「あっ、わかった!」という喜びとともに、とてもクリアでスッキリした体感を得ると思います。

 

それは「対象の本質をとらえること」と表現することもできます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8749123.html

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 「ゲシュタルトができあがると理解が深まる」という感覚を御理解いただくために、具体例を取り上げます。私のほろ苦い経験です。

 

 過去のブログ記事やこれから配信する「The Power of MindⅠ」第六章で取り上げますが、私が2018年春まで勤めていた病院では、たった1年の間に、常勤医師6名中4名が退職しました。シンプルにいえば、コミュニケーション不全がその原因です。

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以前より火種はくすぶっていましたが、病院の将来に大きく関わる重要事項に関してまたしても蚊帳の外にされたことをきっかけに、ついに医師たちの怒りが爆発しました。

 

当時院長だった私は、地域医療を守るためになんとか医局と経営陣との関係を修復したいと願いながら行動していました。しかし、まともな議論は実現せず、私自身も「どうせ先生はその頃はいないから」と言われてしまいました。経営陣の一人に。

 

その時、私は、発言の意図をまったく理解することができず困惑しました。ゲシュタルトができていなかったからです。

 

今春、突然、病院の顧問弁護士から一方的な通知を受けました。その時初めて「どうせ先生はその頃はいないから」という言葉の意味を理解しました。

 

「反対意見は許さない」「文句がある奴は排除する」という信念(ブリーフシステム)のもと、1年以上も前から私の解任劇が秘かに計画されていたのです。経営陣によって。

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それまでは「20186月末で院長職を辞職する」ということで双方合意していましたが、7月以降も医師としては残留するつもりでした。理事長から何度も引き留められ、経営陣ともその方向で話し合いをしていたからです。

地域の患者さんのために双方歩み寄ったと思い込んでいた私は、退職に係る手続き等が一切行われていなかったこともあり、(2018年)4月以降働けなくなるとはまったく想定していませんでした。

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「平気で嘘をつくようなひどい人たちではない」「職員や地域の患者さんを裏切るはずがない」という強い思い込みがスコトーマを生み、「どうせ先生はその頃はいないから」という言葉に滲み出ていた経営陣の本音を読み取れなかったのです。

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(病院の弁護士からの)通知を受け取った瞬間、「反対意見は許さない」「文句がある奴は排除する」「どうせ先生はその頃はいないから」というそれまでの言動(記憶、知識)がつながり(connect the dots)、一つ上の階層で大きなゲシュタルトとなりました。

そして、「だまし討ち」という状況を理解しました。深い悲しみとともに。

 

 

私たちが最初に手にするのは、断片的な一つひとつの知識です。

 

その断片的な知識が蓄積されていくと、そのうちに知識同士がひとまとまりになってつながり、一つの認識になります。これを「知識のゲシュタルト」といいます。

 

 そして、この知識のゲシュタルトの量に比例して、人は様々な問題を多角的に深く考慮することができるようになります。問題(ケース)を発見する洞察力や問題を解決する適応力(プラン)は、知識のゲシュタルトをいかにたくさん持っているかにかかっています。

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問題の発見やその解決が可能となるのは「抽象度が上がる」からです。

それは人として向上すること(人間形成)と同義であり、教育が目的としていることです。

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その先に自由の獲得があります。

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そして、獲得した自由意志でうみだすゴールが、さらなる生きる力(エネルギー)と創造性の源泉となります。

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 「ゲシュタルトができあがると理解が深まる」ということについて、そしてその重要な意味と機能について、御理解いただけたでしょうか。

 御質問ありがとうございました。

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

 

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