F-059:虐待で残る「分子の傷跡」

 

今回はjiji.com2018103日配信)の記事から御紹介します。タイトルは「児童虐待、被害者に残る『分子の傷跡』 研究」です。

https://www.jiji.com/jc/article?k=20181003037726a&g=afp

 

 ポイントは、

 

 ・虐待を受けた子どもは、そのトラウマ(心の傷)を示す物質的特徴が細胞の中に刻み込まれている可能性がある

 

 ・過去の虐待歴を調査する犯罪捜査の助けとなる可能性を秘めている

 

 ・トラウマが世代間で受け継がれるのか否かをめぐる長年の疑問解明への一歩ともなりえる

 

3点です。 

 

 以前のブログ記事でも、「情報的な心の傷が、物理的な脳の傷となる」ことを御紹介しました。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/10114934.html

 

 今回の記事中のカナダ・ブリティッシュコロンビア大学などの研究は、「精子細胞のDNA12の領域に、トラウマの痕跡が、『メチル化』として知られるDNAの改変として刻まれている」というものです。

 研究チームのニコル・グラディッシュ氏によると、「遺伝子を電球とみなすと、DNAメチル化はそれぞれの光の強度を制御する調光スイッチのようなもの」で、「細胞がどのように機能するかに影響を及ぼす可能性がある」ということです。

 

 遺伝子をめぐっては、これまでは受精時においてすでにプログラムが完了しているものと考えられていました。しかし現在は、環境要因や個人の人生経験によって活性化・非活性化される遺伝子が存在することが明らかになっています。

 

 つまり、遺伝子の働きさえも縁起に由るのです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6353044.html

 

 この驚くような事実は、超情報場仮説(理論)でクリアに説明することができます。

 「まず先に高い抽象度で因として情報があり、その情報(処理)がより低い抽象度で果として表れ、ついには物理空間に実体として現れている」という見方が、苫米地博士が提唱されている超情報場仮説(理論)が導きだす重要なポイントです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5165888.html

 

もちろん、物理空間も情報であり、物理空間上の実体(今回の場合、遺伝子やDNA)も情報です。よって、情報の操作により(今回の場合、トラウマ体験やその後の人生経験により)書き換わっていくことは十分に想定できます。

 

 「抽象度」とは、情報空間における視点の高さを表すもので、分析哲学の中の存在論における「Levels of Abstraction」という概念の日本語訳です。

(ちなみに、日本語訳を造語されたのは苫米地博士です)

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4448691.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4449018.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/4516484.html

 

 抽象度の高い情報空間の「心」と、情報空間の底面といえる物理空間での「脳(DNA、遺伝子、体物理空間上の存在)」が、そもそも一つのものであり、観察する抽象度での違いにすぎないと納得できるかが大きなポイントとなります。

それは「心と脳」や「心と体」で一語であると実感できるかどうかであり、「情報空間では体のことを心といい、物理空間では心のことを体という」という事実をしっかり受け入れられるかどうかということです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306438.html

 

「メチル化の度合いには経時変化が見られるため、被験者の男性の細胞を調べることで、虐待の行われた大まかな時期についても知ることができる」というのですから驚きです。

やはり、情報は常にアップデートされ(書き換えられ)、物理空間に刻まれていくのです。

 

とくに教育に関わる者や子育て中の親は、この事実にしっかり向き合い、自分の言動を厳しくコントロールする必要があります。不安や恐怖を使って子どもたちを支配するなど論外です。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/9815429.html

 

論文の筆頭執筆者 アンドレア・ロバーツ氏は、精子細胞内に含まれる虐待の痕跡が、受精後も元の状態のままかどうかについてはまだほとんど明らかになっていないが、今回の研究によりトラウマが次の世代に伝えられるかどうかの解明に向けて「少なくとも一歩近づいている」とコメントしています。

 

つまり、トラウマの記憶は当人を苦しめるだけではなく、次世代にも受け継がれる「負の連鎖」となる可能性があるということ。それが事実だとすれば、いまだに戦争が続き、ますます貧困が拡大する現代社会の行く末は、大変暗いものになってしまうといえます。

 

大脳辺縁系での情報処理から前頭前野での情報処理に変わっていったことが人類の進化といえます。それは抽象度の階梯を上がっていったこととも言い表せます。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/9963845.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/9966391.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/10116950.html

 

次世代に引き継がれるトラウマ記憶により「ファイト・オア・フライト」がますます起こりやすくなった未来においては、人類はそれまでの進化と逆行し一気に退化してしまうのかもしれません。

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8164566.html

http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166289.html

 

では、トラウマが脳の傷になったり、次世代に引き継がれたりすることを防ぐにはどのようにすればよいのでしょうか?

人類を退化から救うために、どのようなことに取り組めばよいのでしょうか?

 

その方法について、次回(F-060)考察したいと思います。キーワードは「BTTF」です(笑)。お楽しみに。
 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/13626536.html

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)