ブログ・シリーズ編
S-01:よりよい“議論”のために
S-01-14:ディベートを制する4つのポイント-1 <ハーム>
このシリーズでは、 “議論”について、そして“議論”をよりよくすることについて考察します。
PMⅠ-02-13:http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/6194585.html
I-017(告知):http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/11594310.html
S-01-00(目次):http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/11613757.html
14:ディベートを制する4つのポイント-1 <ハーム>
とるべき行動の有効性の議論には、ケースサイドとプランサイドの二つがあることを説明しました。この二つのサイドの違いにより反論の仕方も違ってきます。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/12658417.html
ケースサイド、すなわち必要性に対する反論にはハーム(問題性)とインヘレンシー(内因性)への攻撃という二つがあります。
「ハーム」というのは、そのプランを実行しないとどの程度の影響がでるのかということ。重要性が大きいほど、そのプランをより実行すべきだということになります。
ハームとは異なった意味合いでアドバンテージ(利益)と呼ぶこともあります。
このハームまたはアドバンテージの大きさを攻撃することになります。ちなみに、ハームやアドバンテージの大きさのことをシグニフィカンス(重要性)とよびます。
それでは、S-01-09(http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/12340209.html)でも取り上げた「優秀な成績で卒業する看護学生に対して、医師会長賞(の副賞)として4000円ほどの多機能ペンを贈る」という具体的な論題で考えてみましょう。
(…簡単な論題と感じるかもしれませんが、私が参加した委員会ではこんなシンプルな論題でさえスムーズに議論することができませんでした)
<例> ハーム(問題点):主張される行動の不実行に伴う悪影響…この論題では「多機能ペンを贈らなかったとしたら~」
「学生のモチベーションが下がる」
「看護師希望者が減り、地域の看護師不足に拍車がかかる」
「不公平感、理不尽感から雰囲気が悪くなる」
「失望してメンタル不調に陥る」etc.
<例>アドバンテージ(利益):主張される行動の実行に伴う好影響…この論題では「多機能ペンを贈ったとしたら~」
「学生のモチベーションが上がる」
「看護師希望者の減少を防ぎ、看護師不足を食い止めることができる」
「競争意識から全体のレベルが上がる」etc.
このとき「モチベーションが下がる」や「雰囲気が悪くなる」というハーム(問題点)のシグニフィカンス(重要性)に対して攻撃を加える選択があります。「重要性がないのだから、やる必要はないじゃないか」という感じです。
次に解説するプランサイド(有効性)の話とつながりますが、ハームのシグニフィカンスが低いと「多機能ペンを贈ったら雰囲気は良くなるかもしれないが、それ以上に深刻な問題が生じる」というディスアドバンテージ(不利益)による攻撃に負けてしまう可能性があります。
主張する側は、主張の際にハームのシグニフィカンスを十分高めておく必要があります。逆に攻撃側はシグニフィカンスが低いとみたら、そこを攻撃して、プランサイドのディスアドバンテージにつなげるという反論に持っていきます。
このケースでは「(副賞で)多機能ペンを贈る」ということが、地域医療の未来にとってどれだけ重要であるか(シグニフィカンスが高いか)が問われます。
-参考-
苫米地英人博士著「ディベートで超論理思考を手に入れる」(CYZO)
(つづく)
苫米地式認定コーチ
苫米地式認定マスターヒーラー
CoacH T(タケハラクニオ)
-追記-
多機能ペン一つのことで大げさに感じられるかもしれませんが、私の属する地区医師会では医療従事者の確保が喫緊の課題で、このままでは本当に地域医療が崩壊してしまいかねません。関係者はみんな、危機感をもって真摯に取り組んでいます。
コーチングの知識とスキルは、生老病死の四苦に苦しむ患者さんを救う福音となりますが、医療・福祉従事者自身にとっても大きな救いとなります。「…だから、“いのちの現場”にコーチングをしっかりと届けたい」と願いながら、私は活動を続けています。
http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/8166400.html
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