F-037:「もうおねがい ゆるしてください」 ~心の傷はやがて脳の傷になってしまうという科学的事実~

 

 201866日にとても痛ましい事件が報道されました。以下、NHKのニュースサイトより引用します。

 

 引用開始

東京 目黒区で5歳の女の子が死亡し、父親が暴行を加えたとして逮捕・起訴された事件。自宅の捜索で見つかったノートには、女の子が鉛筆で書いた書き込みが見つかりました。

 

警視庁によりますと、死亡した船戸結愛ちゃん(当時5才)は、しつけと称して、毎日午前4時ごろに自分で起きて体重を測ったり、ひらがなを書く練習をしたりすることを命じられていました。

 自宅の捜索で見つかったノートには、結愛ちゃんが鉛筆で書いた書き込みが見つかりました。

 この中では

「もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりはもっともっと あしたはできるようにするから 

もうおねがいゆるしてください おねがいします 

ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして

きのうぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちしてきたこと なおします
あそぶってあほみたいだから ぜったいぜったいやらないから やくそくします」

などと書かれていました。 

 

結愛ちゃんは父親に「太っている」と指摘されたことから、食事は1食につきスープ1杯か、おわんに半分のご飯とみそ汁などしか与えられず、ノートには自分で測った体重を毎日、書き記していたということです。

 引用終了

 

 警視庁捜査1課によると、両親は今年の1月下旬頃から結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態に陥らせ、2月下旬頃には結愛ちゃんが衰弱して嘔吐するなどしたにもかかわらず、虐待の発覚を恐れて病院を受診させることをせずに放置したということです。

3月2日に、低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症で、まだ5才の結愛ちゃんは死亡してしまいました。

 

 1960年代のアメリカで「虐待」という概念を医学的な観点から広めたのが、米国コロラド大学小児科教授 ヘンリー・ケンプ氏です。「被虐待児症候群(The Battered Child Syndrome)」という論文がきっかけで身体的な虐待への関心が一気に高まりました。

 

 その後、フェミニズム運動の高まりとともに性的虐待にも注目が集まるようになり、昨今のセクハラ被害を告発する「#MeToo」運動や被害の撲滅を訴える「Time’s Up」運動へとつながっています。

 

 1980年代になると児童虐待をより生態学的な観点からとらえるようになり、「チャイルド・マルトリートメント(Child Maltreatment)」という表現が使われるようになりました。

 Maltreatmentは「悪い」という意味のmal +「扱い」を表すtreatmentで、日本語では「不適切な養育」と訳されます。

 

 マルトリートメントは虐待とほぼ同義ですが、子どもの心と体の健全な成長や発達を阻む養育をすべて含んだ呼称です。子どもに対する大人の不適切な関わり全般を意味する広い概念といえます。

 大人の側に加害の意図や自覚がなくても、あるいは子どもに被害の痕跡がなくても、行為そのものが不適切であれば、それはマルトリートメントとされます。「しつけ」と称される大人の行為の多くがマルトリートメントに入るはずです。

 

 日本小児科学会のHPに公表されている「子ども虐待診療手引き」中の「27.マルトリートメント症候群の長期予後」には、マルトリートメントが認知面・情緒面の発達に及ぼす影響は、心理的なもののみならず、発達している最中の脳自体の機能や精神構造に永続的なダメージを与えてしまうことが明らかになったと記載されています。

それは脳内で生じた分子レベルの神経生物学的な反応の結果、神経の発達に不可逆な影響を与えてしまうことから起こります。

 日本小児科学会HP「子どもの虐待診療手引き」:http://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=25

 

 つまり、マルトリートメントが心の傷をつくり、その心の傷がやがて脳の傷となってしまうのです。

 

 福井大学子どものこころの発達研究センター 友田明美教授の著書「子どもの脳を傷つける親たち」(NHK出版新書)によると、

 

 ・子ども時代にDVを目撃して育った人は、脳の後頭葉にある視覚野の一部で、単語の認知や夢を見ることに関係する「舌状回(ぜつじょうかい)」の容積が平均6%小さくなる

 ・厳格な体罰を経験した子どもは、前頭前野の中で感情や思考をコントロールし、行動制御力に関わる「(右)前頭前野内側部」の容積が平均19.1%、「(左)前頭前野背外側部」が14.5%小さくなる

 ・厳格な体罰を経験した子どもは、集中力や意思決定、共感などに関係する「右前帯状回(たいじょうかい)」が16.9%減少する(この部分の損傷は、気分障害や素行不良につながることが明らかになっています)

 ・性的なマルトリートメントを受けた子どもは、左半球の視覚野の容積が8%減少する。中でも顔の認知に関わる「紡錘状回(ぼうすいじょうかい)」は平均18%小さくなる

 ・より多くの種類のマルトリートメントを一度に受けると、海馬や扁桃体などにまで深刻な影響が及ぶことが明らかになっている

 

 など、小児期のマルトリートメント経験によって神経回路全体に構造的な変化がでてくることが詳細にまとめられています。

 

 繰り返しますが、マルトリートメントはまず心の傷をつくり、その心の傷はやがて脳の傷となってしまいます。

 それは現代の医学研究が明らかにしつつある科学的事実です。

 

 

 ところで、なぜ心の傷は脳の傷となってしまうのでしょうか?

 

 答えは、「心と脳は抽象度が違うだけで、そもそも同じものであるから」です。

 

 

 心と脳は同じものです。同じものを抽象度の違う次元で表現したものです。情報空間では心、物理空間では脳というように。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/cat_123517.html

 

 「すべてが情報であり、最も抽象度の低い次元を物理という」「高い抽象度次元での情報が物理空間に写像としてあらわれる(あらわれようとする)」ということが超情報場仮説から導きだされることであり、最新の科学研究がどんどん明らかにしていることです。

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5165789.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5165823.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5165888.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306380.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306438.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5306445.html

 http://blog.livedoor.jp/coachfor_m2/archives/5445932.html

 

 21世紀は、「すべてが情報である」という事実をベースに、子育てや教育、医学・医療、そして人生そのものをとらえなおすべき時代であるといえます。

 

 冒頭で紹介した5才の少女を死に至らしめたのは、低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症ではなく、「もうおねがい ゆるしてください」という言葉で表出された心の傷そのものです。

 

 

 世の中からマルトリートメントをなくしている!

マルトリートメントという概念さえない未来を実現している!

そのために、マインド(脳と心)について学び、実践するコーチングを広げている!!

 

そんなイメージが、少女の理不尽な死を知ったときに湧き上がってきました。

 

 

苫米地式認定コーチ                        

苫米地式認定マスターヒーラー     

 CoacH T(タケハラクニオ)    

 

子どもの脳を傷つける親たち